ビワマス釣り 100+の疑問

ヒメマスのためのヒメペラの作り方




嗚呼 門外不出/中禅寺流古式ヒメペラ仕掛け


その昔より中禅寺湖の姫鱒職業漁師の子々孫々に、一子口伝で伝わると言われている秘伝の「ヒメペラ」 
これは、門外不出の古文書にその匠の造りが書き留められていたことを、偶然に発見した旅団釣技研が、現代釣学の粋を集めて二十一世紀の世に甦らせることに成功した記念事業である。
(ヒメペラ復活製作委員会)






 ヒメペラ製作のための材料
  1. 0.7ミリのアルミ板
  2. 0.5ミリのピアノ線
  3. クレビスCL−1
  4. ビーズ赤(M)
  5. ビーズ赤(S)
  6. 蛍光ビーズ/ハード夜光4号F
  7. ホログラムシート(金)
  8. ナイロンライン6号
  9. ナイロンライン8号
  10. ローリングスイベル6号
  11. インター付きローリングスイベル3号
 今回は金色シートを使い金色のペラを造ったが、銀色の
ペラが一般的である。
匠之技 其之壱





 ヒメペラ製作のための道具

  1. 金切りハサミ
  2. ニッパー
  3. ラジオペンチ
  4. ハサミ
  5. ポンチ
  6. アーレンキー 3ミリ
  7. 棒ヤスリ
  8. 平ヤスリ
  9. かまぼこ板
 ありふれた工具ばかりであるが、この中でもっとも重要
な工具は、直径3mmから2.5ミリの丸い軸を持つ工具
である。 それであれば釘でもドライバーでも構わない。
匠之技 其之弐




ヒメペラの型を作る
 ヒメペラの型を決める

 中禅寺湖で綿々と使用されてきた伝統型ヒメペラの形
状は幅広の涙滴型、通称オニギリ型である。 これに対し
て芦ノ湖の正当は、幅の狭い木の葉型が一般的であるそ
うだ。 バスのスピナーベイトのブレードが、ウィロリーフと
コロラドがあるように使い分けがあるのだろう。 オニギリ
型の方が低速でよく回転すると言われている。

 ” 縦84ミリ X 横58ミリ ”のオニギリ
を紙に書き、アルミ板に転写して、金切りハサミで切り取
る。 

 これが以降の「基準の型」、つまり原版になるため、ここ
は気が済むまで切り刻んだりヤスリで削ったりして、型を
決める。
匠之技 其之参




アルミ板からのペラ抜き
 ヒメペラの型を取る

 本来であれば限られたアルミ板資源を無駄なく使用す
るため、コンピューター制御のNC旋盤を使いたいところだ
が、職人芸で一枚でも多く型を取れるように配列を考え
る。 特に将来究極のヒメペラ「純銀ペラ」を製作するとき
などは尚更である。
 先程の基準の型をアルミ板に載せて、マジックで線描き
をする。
 ヒメペラ仕掛けは3枚で一組、つまり三連仕掛けとする。
 今回使用した20センチ四方のアルミ板1枚で、基本の
型1枚とヒメペラ仕掛けが2組作れる。
匠之技 其之四




アルミ板の切り出し
 ヒメペラを切り取る

 いきなり線の上を切らないようにする。 長い線を金切り
ハサミで一気に切ると、手で持っていない側のアルミ板が
丸まってしまうし、きれいな曲線で切る抜くのが難しい。

 急げば回れで、大まかに1枚ずつ切り出す。
匠之技 其之伍




ペラの切り取り
 ヒメペラを切り抜く

 ハサミの使い方であるが、曲線を切る時にハサミを回す
人がいるが、これは間違いである。 浅草のお座敷で紙
切り芸人の芸を見たが、ハサミを回すのではなく紙を回す
と教わったことがある。

 夏の深場狙いの場合に、比重の重い銀板をペラに使う
玄人もいるそうだ。
 一般的には加工がしやすいアルミ板を使うトロ師が圧倒
的に多いが、比重が軽く浮きやすい欠点がある。
 金色であるが、真鍮は比重がアルミよりずっと重いた
め、浮きにくい仕掛けを作れるが、硬いので加工が疲れる
欠点がある。
匠之技 其之六





曲線の切り落とし方
 ヒメペラの切り抜き

 写真では見辛いかもしれないが、金切りハサミが硬くて
うまく小さい曲線を回せない場合は、無理に曲線を切るの
ではなく、複数の直線に切り分けて、刻んで切っていくテ
クもある。
匠之技 其之七




ペラの面取り
 ヒメペラの整形

 1仕掛け3枚のヒメペラを切り抜いたら、ヤスリをかけて
整形していく。 この時に3枚重ねて微調整したりして、同
一のペラを作るようにする。 多少の誤差は許容範囲であ
る。
匠之技 其之八




型押し
 ヒメペラの型押し

 ヒメペラに微妙なアールを付けるのだが、昔からこれに
はビール瓶あるいは五合瓶が正当とされている。
 ヒメペラの中心線を瓶の円柱の軸に正確に合わせ当
て、両方の親指で均等に押し曲げていく。
 この段階できっちりアールが付かなくても構わない。 
折れ曲がり具合が左右線対称になっていることが肝心
だ。
匠之技 其之九




型押しA
 ヒメペラの型転がし

 瓶の下にヒメペラを敷いてから体重をかけて、瓶をごろ
ごろ転がす。 この時、下に敷いてある物がある程度柔ら
かい物の方が、きれいにアールが付きやすい。 今回は
安物のコルクボードを使用した。
匠之技 其之拾




ペラのアールの確認
 ヒメペラのアール調整

 だいたいこんな感じ。
 気持ち足りないと感じたならば、両手で修正する。 ペラ
の上、つまり頭側はアールが付きにくいので、両手で微
妙に曲げ足しておく。


 漁師級のヒメトロ師に言わせると、「ペラの極意は回転
せぬことなり」と言う達人が居るのも事実。 各人、言より
も体を以って真理を究めるべし。

 その場合の回転の速度は、3秒に1回転とか、あるいは
たまに回転する程度。 間違ってもスピナーベイトのブレ
ードの様にくるくる回転してしまってはならない。

ビンでアールを付けてから、ペラの頭を足で踏みつけて逆
S字に、ペラを整形するのが、門外不出の秘伝だ。
匠之技 其之拾壱




ポンチの位置決め
 ヒメペラの穴位置付け

 クレビスを通すための穴あけの位置は意外に縁に近く、
ヒメペラの頂点から2ミリぐらいの所にマークする。
 マークする前に、使用するクレビスの懐の幅とよく相談
すこと。
匠之技 其之拾弐




穴あけ
 ヒメペラの穴あけ

 万能の板であるかまぼこ板の端に、ヒメペラの頭を乗せ
てポンチで一回打つ。 2打目は裏返しにして反対側から
1回打つ。
 同じ方向から何度も打つと周りがべっこり凹んでおかし
くなるので注意。 ミニドリルを使用しても構わない。 当
旅団は現時点でミニドリルは装備されていないので、ポン
チを使用した。
匠之技 其之壱拾参




穴の整形
 ヒメペラの穴の整形

 夜光貝スプーンの穴あけと同じであり、棒ヤスリで試し
ためし広げて整形していく。 特に縁から穴までの距離
は、クレビスとのサイズ関係を確かめながら微調整してい
く。
匠之技 其之壱拾四




表のシート張り
 ヒメペラのシート張り@

 このホログラムシートで最大3枚取れるが、贅沢に2枚
取りにして反射の筋を縦一直線にして裏表張ることもでき
る。
 今回は経済性を優先して、3枚取りの反射筋は斜めとし
た。
 表側の張り方は簡単である。 中心線にシートを合わて
貼り付け、ヒメペラの両縁に空気を追い出しながら伸ばし
て張っていく。
匠之技 其之壱拾五




表のシートの整形
 ヒメペラのシート張りA

 ヒメペラをひっくり返して縁に沿ってハサミで余分な部分
を切り落としていく。
 ヒメペラの裏側は金属地でいく人は、シート張りの作業
はここで終わりとなる。 
 そもそも純銀板を使用する場合は、当たり前の話、シー
トは表も裏も張らない。
匠之技 其之壱拾六




両面のシート張り完成
 ヒメペラのシート張り完成

 裏側も上手に張れたならば、先程あけた穴を棒ヤスリで
あけ直す。 穴をあけた時に生じる余計なシートのカスを、
削り出しておく。
匠之技 其之壱拾七






ピアノ線の曲げ
 ピアノ線曲げ@

 アーレンキーあるいはドライバーの軸などにピアノ線を一
回転きつく巻き上げ、スイベルを通すための輪を作る。
匠之技 其之壱拾八




スイベルを通す
 スイベルの装着

 スイベルを通す。
匠之技 其之壱拾九




わっか作り
 ピアノ線曲げA

 スイベルの通った輪にアーレンキーを差込み左手で固
定して、右手の中指と親指で2,3回ピアノ線を隙間無く
巻き上げる。 この時、巻き上げている側のピアノ線がぐ
るぐる曲がっていくだけで、巻かれている方のピアノ線
は、新品同様ピンと真っ直ぐであること。 
 一直線になっていないと、実際に水中で引っ張っぱられ
て力がかかっている時に、本来のピアノ線の強さが損な
われる。
 2,3回巻き上げたら今度は右手を固定して、左手のア
ーレンキーをぐるぐる回してピアノ線を巻き上げていく。 
匠之技 其之弐拾





 ピアノ線曲げB

 だいたい1センチぐらいピアノ線を巻き上げれば十分だと
思う。
匠之技 其之弐拾壱




下側のビーズを入れる
 ビーズの装着

 ピアノ線の端はまだ切らないで、先にビーズを通す。 S
サイズを通してからMサイズを通す。
 ヒメペラの回転をよくするためには、この上から大小の順
の並びが良いと思う。 摩擦係数とかの問題ではなく、ク
レビスの真下は大のビーズの方が、ヒメペラが必要以上
に倒れ込んで仕掛けのナイロンラインに擦れずに、ヒメペ
ラ自体を多少なりにも押し出しているからである。 
 ピアノ線の端はビーズの回転を妨げない程度の長さ、ビ
ーズの半径よりちょっと長い程度で切り落とす。
匠之技 其之弐拾弐




ペラを通す
 ヒメペラの装着

 黄金のヒメペラにクレビスを掛けてピアノ線に通す。 
 言い忘れたが、今仕掛けの下側から作っているので、
写真だと親指側がヒメペラの裏側である。
匠之技 其之弐拾参




両耳の整形
 蛍光ビーズの装着

 クレビスを介してヒメペラを通したら、機能的にはそれで
もう完成なのだが、そこは一捻り入れてみたいと思う。
 今回は海釣りなどでよく使われる蛍光ビーズを、飾りの
意味を含めて使用してている。 マズメ時の薄暗い中、蛍
光でアピール度をさらにアップを狙っている。
 すべてのビーズを通したら、またドライバーなりアーレン
キーで反対側のわっかを作ってスイベルを通して、ピアノ
線を巻き上げていく。 クレビスとビーズの遊びは2ミリぐ
らいとして、そこまでピアノ線を巻き上げていく。 何事も
遊びが肝心である。
 ラジオペンチで両側の輪をできるだけ丸く整形する。 ま
たピアノ線の軸線と輪が一直線になるように角度を調整
する。
匠之技 其之弐拾四




ヒメペラ1枚の完成
 ヒメペラの完成

 これと同じものを三つ作る。 慣れれば簡単な工作だ。
匠之技 其之弐拾五



ヒメペラを三連に接続する
 ヒメペラの三連結1

 3つのヒメペラを、6号のナイロンラインで45センチ間隔
で三連結する。
 鈎に近い方のヒメペラ(写真では一番下)から10センチ
離してボールベアリングスイベルを結ぶ。
 釣り場の状況に応じて、このボールベアリングスイベル
より、1号から2号までのハリスを25センチ接続する。 
鈎はチップ鈎などお好みを使用すれば良い。


最近では、この古式三連結仕掛けを改良して、一番最後
のペラをドジャーに換装しているタイプも使われているよう
だ。 ペラで群れを寄せてドジャーでバイトを誘うていう仕
掛けだ。

 この場合のドジャーは、4/0サイズの様な小型が良い釣
果を出している。
匠之技 其之弐拾六




ナイロンラインを染める
 ヒメペラの三連結2

 一番上のヒメペラからL字オモリまでを結ぶ8号のナイロ
ンラインを接続する。 オモリとヒメペラ仕掛けの接続方法
は、3号のスナップスイベルを使用すると便利である。
 ボート上での仕掛けの扱いをしやすくするために、この8
号のラインは青マジックで染めておくと、船上で目だって
仕掛け捌きの都合が良ろしい。

 ペラ間はナイロンかフロロにすることを薦める。よく市販
のヒメペラ仕掛けはワイヤーが使用されているが、あれは
釣師朗から見ると素人仕掛けだと思う。玄人はそんな横
着な仕掛けは使わないよ。
匠之技 其之弐拾七




いろいろな色のヒメペラ仕掛け
 いろいろなヒメペラ仕掛け

 ヒメペラのシートを写真のように替えるとバリエーション
が増えて楽しい。 ここいらは遊びとしての楽しさが必要
だと思う。
 仕掛け全体の長さは3メートル近くあるので、仕掛けご
とにきれいに巻いて保管しておく。
 市販の手作り仕掛けは、これより一回り小さいヒメペラ
が多く、アルミ板の地をそのまま使っているタイプがほと
んどのようである。 また人によっては、全面シート張りで
はなく、赤とか青の反射シールをまだらに貼り付けている
らしい。
 いつか純銀板で仕掛けを作りたいが、肝心の純銀板は
どこで売っているのかまだ確認していない。 東急ハンズ
で売っているのかな。

 作ったその仕掛けが何故かよく釣れると分かった場合
でも、それをもっと釣れる様にと改造してはならない。 そ
の仕掛けは保存してそれと同じ仕掛けを作ることが大事
である。
 
匠之技 其之弐拾八










嗚呼 現代の錬金術/銀メッキのヒメペラ