黄金の鯉 この日のお昼だったかな、ぜんぜん釣れない中、琵琶湖のど真ん中を一人でのどかにスローで流していたのは。 何気無く後ろを見たらもちろん誰もいないんだけど、きらきら太陽の光が船外機のスクリューでゆらゆら波立つ軌跡に差し込んでいてなんか綺麗だなと思っていたらさ。 最初目の錯覚か光の乱反射かと思ったんだけど、水流の下に何かいる?て感じ。 よく目を凝らして見てみると、何か全体が金色で所々が黒い50センチぐらいの紡錘形みたいなものが、ゆらゆらボートに着いて来ている様に見えた。 魚? いやボートの尻から2メートルぐらいの所をのんきに着いて来るはずない、しかしゴミとか枯れた水草の塊とかにも見えないし・・・。 不思議に思ってしばらく見ていたら、すうっと反転して消えた! えぇっ魚じゃん!? 宿でその不思議な体験を話したら、それは野鯉だろうてさ。琵琶湖にはたまぁにそんなことがあるそうだ。 ほんとに琵琶湖て面白いところだ。その鯉は前世は人間だったのかもしれないね。人が恋しくて着いて来たのかな。 |
イワトコは無理やろ!? 二日目の漁が終わって桟橋に船を付けて、皆で後片付けをしていたらさ、隣のボートの上でROSCOさんが生簀から今日の水揚げを、タモ網で無造作にすくい揚げて、ボートの床にぶち上げていた。 毎度のことだけど、床にビワマスが何匹もびちびち跳ねまくっているのが見えてさ、でまたすくったらビワマスの中に何か違う形の魚が跳ねていた。 何だろう?て黙って見ていたらさ、フナでやんの。 そういえば昨日ケタバスが食べたいと言ったら、ほな釣ったるわ、でほんとに釣って帰ってきたから、もうこのとき頭から信じ込んでいたんで、この人フナまでトロで釣っちゃうんだとね。 そんでまたすくって床にぶちまけたら、こん時ゃほんとに驚いたね。 ナマズがごろんとうねうね出てきたのにはね。 前々からビワマスも希少価値があるけれど、最近滅多に獲れなくなったイワトコナマズ、これが釣れたらいい小遣い稼ぎなんのにとか冗談で言っていたけど、絶対にナマズはトロでは釣れないだろうと思っていた。 それが目の前にうねうねと転がされた日には、ROSCOさん、どうやって釣ったん!? と思わず叫んでしまったよ。 この人何でも釣っちゃんだ、天才だ・・・と思ったのさ。 そしたら、ちゃうちゃう、じいちゃんが網で獲って来たの入れ放しだったんだわ。なんぼ何でもそんなヤツはおらへんやろぉ〜、でした。 |
軍鶏鍋の味付け 関西から東京に出て来て一番不味いと思ったのは、すき焼きだね。 昔上野にすき焼き食べ放題の店があって、貧乏学生の釣師朗は友達と行ったが、出てきたすき焼きを見て愕然としたよ。肉も野菜も最初から鍋に入っていて、おまけに汁までたっぷり入っていた。あとはテーブルのガスコンロに掛けるだけなのだ。 関東はすき焼きじゃないの、すき鍋なんだ。たっぷりの醤油のしょっぱい汁で牛肉を煮てしまう、まさに鍋なんだ。野菜と一緒に牛丼の具をすき焼き鍋で作っているのと変わらない。汁だく!? 霜降りの高級牛肉を関東流ですき焼きにしたら、もうそれは味噌も糞も同じだ。肉の味が台無しよ。まぁ肉と言ったら豚肉の地域だから。昔は高い牛肉の代わりに豚肉混ぜて食べていたとも聞くし。 上等な牛肉をさっと焼いて醤油と砂糖を降りかけてて食べる。これが最高よ。このしつこいくらいの甘さが至福なんだよね。だいたい煮たらすき焼きとちゃうやろ! ところがそう言うのは、関西の下品な味だとか、ただ甘いだけとか、貧しい時代の名残りとか、軽蔑、白い目で見られてしまう。そんなんでいつも、すき焼き鍋で作った牛丼の具を食べる不本意な生活を、東京で余儀なくされていた。 ところが琵琶湖の船宿ですき焼きではないが、夕食で軍鶏鍋をごちそうになった時は、感激したよ。この味付け、この甘さ、これだよ、父親がよく作ってくれたすき焼きの味、なんかものすごく懐かしい。生き別れた家族にあったような気分だった。 誰がなんて言ったってすき焼きは関西や!! |