Method 2 ジクザグ
ジグザグ航行をするのは主に2つの目的がある。
1つは水平方向で広く魚群を捜すことである。 釣りをしている限り釣り人も所詮は人の子だ。 今流しているコースには実は魚はいなくて、そのコースの直ぐ横10メートルのところに入れ食い魚群がいるんじゃないか?の疑惑と誘惑に絶えず苛まれるものである。 特に朝から一匹も釣れていないと尚更である。
もちろんその隣りに行っても釣れないかもしれない。 隣りの芝は青く見える。 ボクの青い鳥はどこ?の心理的迷路に迷い込むのもストレスが溜まるもんだ。
あと50メートルコースを替えなければ待望の入れ食い魚群に突入するかもしれないが、そこでふとコースを変えてまた不毛地帯を流すことになるかもしれない。 もうこうなると石油を掘っているのと同じである。
いくら掘っても油が出てこない。 時間も資金も残り少なくなってきた。 もう止めるかでもあと1メートル掘ったら油層にぶち当たるかもしれない。 続けるか撤退するかの判断を絶えず求められるオール・オア・ナッシングな男の仕事なのである。
ジグザグはそんな焦る気持ちを多少なりともケアしてくれる。 特に釣れない眠いの船漕ぎ状態では眠気覚ましにもなるしね。
またジグザグは本来のコースの左右を広く探ることができる。
ジグザグする時は最終的にたどり着く向こう岸の目標に向かってジグザグを行う。 たどり着く、つまり本来のコースの芯と言うか軸を意識しないでジグザグするとボートは迷走する。 これはジグザグと言わずランダム、あるいはブラウン運動と言う。
たしかにブラウン運動も一つの手ではある。 むかし中禅寺湖で知り合った訛りの強い謎のトローラーが教えてくれたのに、先ずヒメトロでヒメマスを釣ってそれに鈎を付けてラインを50メートルほど出し、エンジンを切って風の吹くまま気の向くまま湖を漂流しているとレイクがどかんと来るってかぁてのがあった。 これはブラウン運動釣法だ。
もう一つの目的はルアーに上下運動と旋回運動の変化を与えることだ。
ジグザグするとルアーが右や左に旋回することは容易に分かるであろう。 ボートが右に左に旋回すればその先のルアーも同じように旋回する訳だ。
キャスティングの釣りにしたって棒引きばかりでなく、ロッドを操ってルアーを右や左に振るアクションを加える。 これを操船で行う訳である。 何度も言っている様にレイクトローリングもキャスティングの釣りも基本的に構造は同じてことである。
上下運動とは何であろうか?
キャスティングの釣りであると、リーリングを止めれば推力がなくなりルアーは沈む。 リーリングを開始すれば推力が付いてルアーは浮上する。 この場合ルアーは浮沈、つまり上下運動を行っている訳だ。
その動作の原動力が推力のオン・オフである。 この推力のオン・オフには2つの形態ある。 1つはボートが旋回することでの左右の単位時間当たりの移動距離であり、もう1つは後で説明するエンジン出力の強弱である。
車の運転で考えると分かりやすい。 ハンドルを右に切ると左側の車輪の単位時間移動距離は右側の車輪のそれよりも大きい。 ぶっちゃけた話、左側がぶぁぁと速く走っているのである。 右側は回転半径の中心からあまり動かない。
速度とは単位時間当たりの移動距離のことだから、左側の速度は右側の速度より速いのは理の当然である。
つまり舵を切って旋回することによって、右側のルアーと左側のルアーの速度を変えることができるのである。 速度が変わることはリーリングの速度を変えていることと同じなので、ここでルアーの上下が発生するのである。
右に旋回すると左のルアーは直進の時よりも速度が上がるため浮上する。 一方右のルアーは直進の時よりも速度が落ちるため沈降する。 次に左に旋回するとこの逆が起きるため、浮いていた左のルアーは今度は沈み出し、逆に沈んでいた右のルアーは浮上を開始する。 こうしたジグザグによって左右のルアーは上下運動を繰り返すのである。
ジグザグ航行はルアーを上下・旋回させて獲物を誘うのである。
さてジグザグ航行の際覚えておいてもらいたいのは、こちゃこちゃジグザグしても効果よりデメリットの方が大きい時があることである。 ロッドをボートのどの位置にホールドしているかにもよるけれど、急旋回するとレッドコアラインがスクリューに触れてぶった切られるからだ。
またこちゃこちゃしてもライン自体の伸びに推力の強弱が吸収されてしまうし、あのただっ広い湖中でちょこまかアクションするより、大きくアクションして誘った方がアピール度も高いと思う。 しかもスクリューになんて捕まったら笑えないしね。