Method 4 急速浮上
ストップ・アンド・ゴーに似ているが考え方はちょっと違う。
釣り用語にリアクションバイトてのがあるがその反射食いを誘うものだ。 このテクニックは渋谷の釣具店のトローラー店員に教えてもらった。
魚がいるタナにいかにルアーを長く留まらせるのが釣りのキモと言ったが、意識的にタナを横切らせることによってリアクションバイトを起こさせる応用テクニックである。 今まで説明してきたメソッドは基本的にタナに留まった範囲での継続的テクニックである。
ところがこのメソッドはタナから大きく外れた位置からの単発的テクニックなのである。 つまり一発勝負なのである。
B29は排気タービンつまりターボを搭載した爆撃機であったため、空気の薄い高度1万メートルの高空から日本の町々焼夷弾を撒き散らすことができた。 迎撃する日本軍の戦闘機はターボエンジンが開発されていなかったため、1万メートルにまで上昇するのは、えんやこらえんやこらどっこいしょのやっとの思いでそこまで息も絶え絶えで上昇した。 高速で飛行するB29に追いつくために急降下しながらスピードを加速して攻撃をしたそうだ。 そしてたった一回限りの攻撃しかできなかった。 一端高度を下げるとまたその攻撃可能高度に戻る内にB29は遥か彼方に退避しているのである。 つまり一発勝負、一撃離脱しかできなかったのである。
むかし教習所の待合室で見るからに頭の悪そうなヤンキーの先輩後輩が二人でこんな話をしているのを聞いて思わず爆笑しそうになったことがある。
「おまえよぉ、免許取ったら何に乗んだぁ?」
「先輩、やっぱぁ、絶対、ツルボすっよぉ。」
ツルポとは当時流行ったTURBO、つまりターボのことである。 後輩ヤンキーはそのままローマ字読みしたのである。 ほんとにこいつらはバカだねぇと思って聞いていたんだ。
ところがそれから数年経った時に、ターボはドイツが開発した技術であるためTURBOの正しい発音はツルボと発音するのが正しいことを知ったのである。 ターボは戦勝国アメリカが英語読みで勝手に発音しているだけなのである。 釣師郎は思ったよ。 あの時のヤンキーたちはドイツ語の分るインテリ・ヤンキーだったんじゃないかとね。
で話を元に戻す。
魚には有効射程距離てのがあると思う。 100メートル先にベイトがいたとした場合それを仮に目視したトラウトが追いかけて行ってそれを捕食するだろうか? 追いかけるのに必要なカロリーと捕食して得られるカロリーの費用対効果計算プログラムがDNAにプレインストロールされていると思っている。
だからルアーをタナに長く留めておけばいくつかの群れと遭遇するうちにその射程距離に入る可能性が高くなる訳だ。 その確率が高いてことはそのまま釣れる確率が高いてことと同義語である。
また魚には手が無いため捕食するのも攻撃するのもすべて口で行われるのだと思う。 その射程距離に何か小さな物が突然飛び込んできた場合、反射的に食べるばかりではなく攻撃しているのではないかと思う。 つまりこれがリアクションバイトである。 待ち伏せ方のバスとかブラウンはその傾向が強いと思う。
キャスティングの釣りだとテリトリーに飛び込んで行き魚の目の前を一瞬で横切る様にルアーの早引きを行う。 出会い頭の交通事故を演出する訳である。
で、レイクトローリングもキャスティングの釣りと基本的に同じなのであるから、これをレイクトローリングに置き換えてみることが可能なのである。
先ずエンジンをニュートラルにしボートを止める。 すると今まで引っ張っていたレッドコアラインはどんどん沈んでいく。 タナの倍くらいの水深まで十分レッドコアラインを沈めたら前後の安全確認をしてからギアを前進に入れて発進するのである。
ぶぉぉおおと加速すると良い。 ルアーはタナの倍くらいの深度から急速浮上してタナを一瞬で横切る。 その時に射程距離でこの急速浮上する何か小さな物を捕捉したトラウトは反射食いするのである。
このテクニックを応用した釣り方の一つに、ベイトの群れについているサクラマスなどの捕食魚に対して、ルアーを群れの底部の水深まで沈め、魚群探知機でその群れの位置を確認してルアーが群れに達する頃合を見計らって、急加速とかS時旋回する。
するとルアーは群れの下から上へ向かって斜めに切り裂くように急上昇し、まさに群れから慌てふためいて飛び出してきたベイトに見えるわけだ。 サクラマスなどの捕食魚が思わず飛びつくリアクション・バイトが期待できるのだ。
銀山湖のようなバカ深いエリアでは、このテクニックは使いやすい。 お祭りさえ気をつければ、X字ターンをする。 ラインの先端が進行方向にあるシュールな光景となるが、推力が掛かるまで時間が長いため、ラインはどんどん沈んでいっている。 そして推力が掛かると、ルアーは急浮上してくる。
シンク・シンク・ブォォオオ…。
沈黙の艦隊の海江田艦長に成り切るのならば、「ベント閉め! 全タンクブロー。 機関最大速。 潜舵アップトリム最大!」なんて手に握ったマイクに見立てたジッポに向って叫ぶと気分が出て良いかもしれないな。
ここでのコツはタナを横切る時つまり魚の射程距離を横切る時に、ゆっくりではなくすぱっと横切ることである。 もちろん魚が追いつけないほどの全速では困るが、短時間で加速して早引きのスピードまで達することである。
最後に捕捉するとこのメソッドを使う場合はあんまりべにゃべにゃの柔らかいロッドでは水の抵抗でのされてしまうので使用には適していない。 ある程度硬目のロッドの方がいろいろ使えて便利とタックル編で書いたのは、こう言った理由からである。