ビワマス釣り 100+の疑問

BIWA History 4


第4話 マッチ・ザ・スジエビ

(12.09-10,2006)



この要中の要の島を絶対防衛線として死守せんが
ために、関東軍から派遣された竹生島駐屯の決死
防衛隊の精鋭兵たち。 この夜のささやかな作戦会
議では、隊員の玉砕(ボウズ)覚悟の一か八か60
オーバー釣法に対し、司令官の「玉砕は許さず」の
命により、最後の一人まで一人十釣の徹底抗戦釣
法が確認された。 
覆しがたい敵との圧倒的な物量の差に対して、島
の近くで獲れた野生の猪肉の調達に成功した防衛
隊には、貴重なご馳走が最期の食事として振舞わ
れた。 この後増援で駆けつけた関西軍からも大量
の弾薬(一升瓶型砲弾)が補給され、兵士たちは水
杯(さけさかずき)を深夜まで酌み交わすこととなっ
たのであった。



竹生島防衛のために島の周りには秘密航路が縦横
無尽に張り巡らされている。 この秘密航路の両脇
には無数の機雷が敷設されている。 うかつに近づ
くと機雷の餌食となって航行不能となる。 敵の侵
攻部隊を迎撃するために移動を開始した僚艦。 し
かしこの秘密航路に敵の偵察特殊潜航艇が既に侵
入していたが発見、地元徴用の軍属が拿捕した。
激しい艦砲射撃とともに2日間の戦史に残る戦闘が
開始された。 着弾の水飛沫に強風が吹き付け、生
死が交差する戦場に美しい虹が鮮やかに掛るシュ
ールな光景が出現した。 釣師郎艦の30センチ主
砲が敵艦に命中、轟沈とする。 平均的なサイズの
軽巡であったが、搭載機関のパワーが桁外れに違
うのか、主砲TMC−HeavyActionでもこの有様で
ある。




12月9日

大作近くのコンビニの駐車場で想定外の接触事故、駐車していた車にトラックがぶつかってきた、なんとも災難なもらい事故が発生したが、何とか騙し騙しで駐車場から母港桟橋にHayasiさんと不幸中の幸い五体満足で到着できた。きっと一生忘れない釣行となるだろう。

天気は曇りでいつ雨が降ってきてもおかしくない状況だった。天気予報では昼から小雨であるが、風速0メートルで「静穏」と書いてあった。

先週末のの試験釣行だと爆釣ではないが、いつものポイントで釣れたとのことも、3cmクラスでないと食いが極端に悪いのが特徴的だったそうだ。夏のどかぁぁぁぁぁんといった強烈なアタリではなく、口を開けずにしゅるっと吸い込むような判断に迷うようなアタリに変わっているそうだ。釣師朗はこの話は以前から聞いていたので、密かに用意済みであった。

7時過ぎに出船、なんでこんなに出口が浅いのかの中、船を二本松から大崎へと進めるコースを今回は最初に選択した。今までは反対側を曳いてから島とそのずっと沖に戻ってくる得意のコースだが、前回はそこよりも大崎沖が大物もヒット数も多かったことから、今回は反対周りで攻めてみたわけである。

さらに前日から現地入りのU氏がタナがバラバラだったとのことから、6色と9色の組み立てで探りを入れた。どんよりした曇りのため光量が乏しいのが気がかりだった。水温は13.1℃だった。9色はド派手さでFlasherをセットした。

50メートルラインを定番速度で曳くも魚探の反応は正にゼロ、ぜんぜん何も無い状態が続く。

初っ端に菅浦湾に入ったROSCOさんから魚影が濃くヒットが出ているとの無線を受信した。U氏もHayasiさんもこの周辺に展開していたようで、暫時菅浦湾に集結しだすとヒット、ヒットの景気の良い無線が飛び込みだしてきた。

釣師朗の方はというと鳴かず飛ばすの沈黙の艦隊状態であった。タナはもっと深いようで適宜落としていくことにした。ツノと夜光の試し曳きであったがどちらにもピクリともなかったので、早々に定番のドジャーに交換して11色で流してみたが、これでもかすりもしなかった。

右手前方岸寄りに僚船が航行していたが、あっちも釣れていないだろうなんて見ていたら、U氏突然立ち上がってちょろちょろ巻き始めた。ただのルアーチェンジかなと思ったがビワマスがくっ付いていた。

後で聞いたら等深線50メートルから60メートルへ出ようと曳くとアタリが有ったそうな。こっちも50メートルラインだがもっと岸寄りなのかとも思ったが、人が当っている後ろのコースを曳くのもみっともないのでそのまま大崎へ進む。

密かに大崎の先に期待していたが、T&M艇がちっよと先に行ってそのままUターンしてきたので、期待薄かと思って島へ向かう。冬場で漁期ではないのか、前回来た時よりもずっと刺し網のブイが少なかった。今はエビ漁がずっと忙しいそうだ。

竹生島へ向かう長い長い旅の途中も魚探の感は全くの不毛地帯で、一体どこに行ってんだと焦りだした。

そうこうしている内にもROSCOさんやU氏より景気良い無線が頻繁に飛び込んで来る。湖流に乗って島を抜けた群が菅浦湾に入って溜まっているのかと思ったが、ここからは余りにも遠い。

まだ時間が有るので島沖の好ポイントをチェックすることにした。しとしと雨の無風ベタ凪で気持ちが悪い。

80メートルラインに差し掛かるとツノ11色にぽつらぽつら当りだすがしょぼい。草履ドジャーの方が調子良いのもよく分からない。しょぼいのなら小さい方が反応良い気もせんではないのだが。

竹生島の真正面は相変わらずダメだったが、通路の葛尾寄りはぱらぱら当りだす。葛尾の菅浦湾寄りの岸寄りでU氏が行動中だった。U氏は自分よりずっと岸寄りを曳くタイプみたいだ。

U氏より無線が入った。「ここ(魚が)居ますよ」と。

U氏は昨日からプラクティスと称して初めてのこのフィールドに単身チャレンジしていた。お約束の仕掛けと釣り場は事前にROSCOさんからレクチャーあったので、関東随一の中禅寺で鍛えられている技も加わって、初陣で10本弱水揚げしたそうだ。

そのU氏を遠目で見ながらさびしい曳きをしていたら、U氏から「ロクマルあるかなぁ〜」なんて無線が突然入ってきた。目の前でやられてしまった。結局後で計り直したら60センチには達していなかったが、50オーバーの立派なビワマスだった。

葛尾沖の等深線が複雑に入り込んでいる地点で、3cmツノの1245時でやっとまともなヒット。50には及ばなかったが十分な引きを堪能する。

でこれの腹を裂くとぱんぱんの胃袋から、12cmの小鮎2匹とワカサギ1匹、スジエビがたくさん出てきた。この大きな鮎とワカサギを見たときに、何でミノーや通常サイズのスプーンとかに出ないんだ!?とマジに思った。普通こういうのを見るとマッチ・ザ・ベイトの定理で同じサイズのルアーを投げるのが定石なのだが。

しかしレイトロの場合はこれは自滅の罠だ。今日のベタ凪中に自分も満たし他の仲間も見たのだが、沖のど真ん中みたいなところでぼぁっとビワマスが湖面を割っているのが見られた。最初はバスかと思ったが、よく見ているとそれはビワマスが下からワカサギや小鮎を水面まで追い上げて捕食しているのだ。つまりそのサイズは表層の世界での話なのだ。

13cmミノーを表層曳きしたり、ボートからキャスティングしたら釣れると思うが、今曳いている深いレンジではそんなものを食べていないのだ。

で何でこの3cmのみとなるのか?は、もしかしてこれはスジエビを食べているのではないかと?ね。

エビというと湖底にへばり付いて居るような気がするが、超沖合いでは中層をオキアミみたいに群れているのではないかと思う。実は翌日に釣った鱒の胃袋には、たった今食べましたていうくらいのフレッシュなスジエビが掌山盛りの量が詰まっていた。

スジエビだったら、追いかけまして激しく喰らい付くような捕食をしているのではなく、それは口を大きく使うまでもなくしゅるっと吸い込むような捕食だと思う。

またスジエビが時速4キロとかで遊泳しているはずもなく、実際にそうだったが遅曳きの方がずっとヒット率がよかったようだ。

また沖にこれだけ美味しい餌が豊富であれば、ここの鱒は何も危険を冒してまでシャローに捕食しに出て行かなくてもいいわけだ。教科書に出てくる湖とは豊かさでぜんぜん違うなのだ。湖のフィッシングは今でもシャローを釣れのはずだ。

終日カッパが脱げない天気の中、46を頭にアベレージ40の小物中心7本を水揚げした。前回の三分の一の貧果。 ROSCOさんはさすがの1ダース超えだった。



12cmの小鮎と12cmのワカサギ、そして1cmぐらいのスジエビがぎ
っしり詰まっていた。 しかしこの12cmに合わせたらボウズ巡りなん
だよね。

とにかく捕食が夏と打って変わって、吸い込むような捕食になってい
た。 そのためヒットがどっかぁぁぁぁんて感じから、弱いうにゃうにゃし
た乗ったか乗ってないかの微妙なアタリに変わっていた。

だからこの吸い込むバイトに合わせたタクティスが必須なのよ。 分か
りますか??




12月10日

S社長も夜にこんな迷路みたいな路地裏の旅館に駆け付けた大宴会が遅くまであったためか、二日目の出船は9時だった。S社長は今日日曜日は曳いて帰るのかと思っていたら、朝飯食べてそのまま帰ってしまった。もしかして宴会しに来ただけ?

桟橋に向かう湾沿いの道からは、青空に美しい虹が掛っているのが見えた。昨日と違って天気は快晴だ。しかし面白いもので天気が晴れだと風が強い。既に強い西風が吹き出していた。

帰りの長旅があるので12時上がりとした。つまり3時間の操業だ。来年暖かくなるまでの在庫を確保しようと思っていたら、昨日の不漁と来たもんでこの3時間は遊んでいる場合ではなかった。本当だったら今日はキングフィッシャーの試験曳きでもしようかと思っていたが、もうそんな余裕はなくなってしまった。

たった3時間で勝負を賭けるとしたら、一昨日昨日の釣果から考えれば菅浦湾から葛尾、特に葛尾の岩盤沿いと決めた。勝負ルアーは3cmツノの一点買い。

浅瀬航路を抜け切って機関最大戦速で菅浦湾の沖へ直行。ROSCOさんもその辺に既に展開していた。考えることは同じか!?

11色60メートルラインを葛篭尾へ向けで流す。仕掛けをセットしたと同時にヒィィット。しかし喰いが浅いのかポロリとばれる。それでも昨日のような永遠沈黙ではなく、入れポンヒットなので幸先期待だ。

11メートルに感が出た。葛篭尾の一番美味しいコースを取ろうとしたら、何と漁船がやって来てなにやら太いロープを沈めながら、お目当てのコースを斜めによぎるラインで敷設作業を開始した。仕方ないのでぎりぎりで岸へ向かってターンしたらここでもヒット。

やはり漁師が敷設するラインだけあって、このコースは美味しいのかもしれない。その敷設したラインの途中にブイがつながれて浮いているわけだが、これが目印でこの周りを曳いているとサイズは別にしてコンスタントにアタリが出る。このブイ周りと葛尾沖の等深線が入れ込んだ根は必修科目だ。

葛尾を抜けた先でもみっちりやろうかと思い先に進むと、今度は強い北風で断念。ほんとに葛尾の風裏が狙いどころになってしまっていた。

結局昼までに40センチ級を4本揚げることができた。

桟橋に戻る途中は真っ向からの強風で、激しい波しぶきを頭から何度もかぶりながら必死の思いで帰港。正に先に一っ風呂浴びてきましたて状態だった。珍しく知らない釣り人たちが一艘出ていた。関西弁の船だったら地元の釣師たちだろう。

ROSCOさんの友人が昼過ぎにふらっと帰って来た。生簀には50オーバーを頭に10本ほどの今日にしては大漁の水揚げだった。


聞けば大崎沖で大当たりだったそうだ。今日は逆だったようで、またしても読みを外してしまった。

で思ったのだが次回から船団を二つに分けて朝一無線で情報交換し、群れが入っている側に集結する同時2面作戦が必要だと思った。

帰り支度をしていたら忘れ物があったので宿屋に取り戻ると、そこで耳寄りな話を仕入れた。 

「ところであんたら何しにこんな時期に琵琶湖に来たん? 観光とも思えんし。」

「女将さん、実は僕らビワマスて魚釣りに来たんですよ。」

「えっ? ビワマスて釣りで釣れはるんですか!? 漁師が網で獲るもんとちゃうの?」

「まぁ普通はそうなんだけど、関東から来た人は釣り方知っているんで釣るんですよ。しかも結構ね。だからあんな遠くの東京からえんやこらここまで来んですよ。」

「へぇ〜、そうなん!? 驚きましたわ。」

そんなで次から宿の女将がビワマスを時価で買ってくれるとのとこ。ところで時価てどこで確認すんのよ? 近所の漁師に頼んでいても必ずいつでも活きのいいビワマスが入荷するわけではないらしい。網だと毎日水揚げがあるわけではないてことか? (しかし結局は魚納品すんのが面倒くさくて一度も行かないで終わってしまっているが)

産卵前の1kgのもの一番おいしいそうだ。しかも刺身にしたときに、これまぐらいのサイズがないと皿の上で様にならない商売上の理由もあるようだ。

あとそれと最近めったに入荷しないイワトコナマズも買うとか言われたけど、女将さんあれはトロでは無理ですわ。




第5話へ続く