ビワマス釣り 100+の疑問

Method 8 ズル曳き



ある雑誌の記事だったと思うけど、北海道在住のイトウハンターにルアーを一つだけ持って行くとしたら?と聞くと、あのジョイント・ラパラてのが多かった。

東京ではバチ抜け時にシーバス釣りに使っているらしいが、故ラパラが聞いたら仰天するような使い方だな。 あのクネクネがゴカイだかイソメだか知らんが、動きが似ている訳だ。

ルアーを追うのは人間ではなく魚なので、人間がルアーにアクションを付けるではなく、「魚から見てルアーにアクションが付いている」と考えるのがのが正しい筈だ。

その意味から、アクションには二通りがある訳よ。 一つがキャスティングでのトゥィチングやグリグリであり、トロだとスロットル・オンオフやジグクザグの様な人間様が苦労して付けることによって生じるアクションだ。

もう一つが設計されたルアー固有のアクションだ。 ルアー界の逸品はこの固有のアクションだけで釣れる。 これが世に言う「タダ曳きに勝るもの無し」とか「下手なトゥィチング休むに似たり」である。

だからジョイントラパラとかフラットフィッシュとかデビルは、時代を超越した逸品な訳だ。 たしか箱の横に「あなたの釣果を損なうおそれがありますので、アクションの付け過ぎには注意しましょう」と書いてある。

さかな、さかな〜♪は、アクションの何を見ているのでしょうか?

魚の視力は0.5ぐらいと言われている上、昨今の透明度の悪い湖で遠くのルアーが見えるでしょうか? たぶん見えていないでしょう。

じゃぁ、どうやって認識しているかと言うと、多分アクションで生じている水流の音を鋭い側線でキャッチして、なんだ?なんだ?と近くに来てから、視覚でロックオンしているのではないかと思う。

フライでも濁りが入ったり夕暮れの暗がりになると、グレートセッジなどの水中でよく暴れるフライを使うフライマンが多い。 それも同じ理由だそうだ。

逸品として名高いツインブレードがこのタイプに当てはまる。 視覚的には大したアクションではない様に思えるが、この二枚の金属片がカチカチと金属音を鳴らしながらアクションするところがキモなのだ。 なんでも大型魚がベイトの群を捕食しまくっている唇の音に似ているらしい。

金属片がぶつかり合ってカチカチと鳴る金属音が、どうして魚がベイトなどを追い回して食いつくときの捕食音と同じなのか? ずっと前から疑問に思っていた。

マスの唇は実は金属でできているというのなら話はわかるが、パクパクではなくカチカチはどうも・・・? アメリカ人のこじ付けじゃないの?と思っていた。

ところがそう思っていたら、最近ディスカスという熱帯魚を飼いだしてみたら、なんと!それが事実だということを身をもって体験した。

牛ハツのすり身の餌をむさぼり喰いちぎるディスカスたちの口からは、まちがいなくカチッカチッと金属音が鳴っているのである。

ツインブレードの伝説は本当だったのである。

トロはその性格からして、人為的なアクションを付けるのは、竿を手に持つキャスティングの釣りに比べて不得意だ。

だからトロではルアー固有のアクションに重点を置くのが理の当然である。 トローラーが、艶めかしい光を放つ貝などの材質に拘るのも同じ理由だ。 10色出して竿を持って「トゥィチングぢゃぁ!」とて、先端ではほとんど何も起きてないでしょう、たぶん。

着底してベイトを待ち伏せしている居付きのイトウやブラウンを最初から狙ったり、あるいは魚探を見ていたらワカサギの魚影が湖底に張り付いていたり、その周りにヘの字が写っていた情況に遭遇した場合に、湖底をきっちりトレースするテクは相当に難しい。

理屈が判っていても根掛かりが絶えない。 まして理屈が判っていないとその被害尋常為らずてもんだ。 

船速と仕掛けが流れるタナの関係に絶対の自信があれば、短いリーダーにカウントダウン・ジョイントラパラの低速曳きで、地対空ミサイル(根掛かり)を掻い潜り、舐める様な操縦が可能であろう。 魚探睨みながらの精密爆撃だ。

しかし湖底の起伏が激しいエリアでは、この精密爆撃は不可能に近い。 アオリイカのシャクリ釣りみたいに、船頭が正確な水深を伝え、1メートル毎にマーキングした仕掛けで、上下つまり縦に餌木を上げ下げしている限りは、根掛かりは少ない。 しかし、トロの様にラインが横に走っているとそうは問屋が卸さない訳だ。 

そこでこの着底曳きのテクが、その問題をある程度解決してくれる筈だ。

それは、長いリーダーにフローティング・ジョイントラパラなどの浮力が強く、固有アクションの良いルアーを付けて、レッドコアはたっぷり出して低速で曳く。 つまりレッドコアの先端部分が底を曳きずる「ズル曳き」だ。 ラインを着底させることから、着底曳きともいう。

長いリーダーのフローティング・ルアーであるため、リーダーの分だけ底からルアーが浮く。 つまり一定の底ベタができる訳だ。 リーダーは一般論として20メートルが良いだろう。 これはレーザー(レッドコア)誘導爆撃だ。

シンキングやサスペンドタイプのルアーは駄目よ、すぐさま地対空ミサイルの餌食になってしまうからね。

なお、12LBや15LBの華奢なラインだと、根擦れで切れる危険性が高い。 釣師郎もむかし12LBで意外に早く奉納してしまった。 その後の経験で、たぶん18LBが最低規格だと思う。

それで27LBの太いレッドコアを使う手がオーソドックスかもしれないが、でかいリールが要ることと、タックル自体が重過ぎる問題点がある。 そこで凝り性は、18LBの標準兵装の先端に、10メートル程度の27LBを接続したシンクチィップ・フライラインの様な兵装を装備した特殊部隊もいる様だ。

ところで、ジョイントラパラをチラシ鈎に換装する場合は、テールはトレブルフックを外して何も付けないで、腹のみをチラシ鈎にチェンジする。 その方がテールのクネクネがさらに加速装置!(007風)だ。 しかもその方が根掛かりの確率も少なくなる。

最近ではズル曳き用のルアーも発売されているため、それを最初に使うのも手である。 テールフック(シングル)のリップレスのタイプが多い。

シングルのテールフックとはいえ根掛りは中層曳きよりはずっと多いため、ルアー回収を前提とした仕掛け(ラインシステム)に組み替えておいたり、ルアー回収機は装備していた方が良いだろう。

ズル曳きは、@ワカサギが湖底に群れているのを発見してから引き摺る方法と、A適水温と一致している水深を引き摺る方法、B水温躍層と同じ水深の湖底を引き摺る方法がある。

@は魚探を見てワカサギを発見したときに、始める釣法である。 これは餌から入っていった食性釣法である。 だから餌の存在を確認することが必要である。

AとBは魚探で群れを見つけた見つけないは関係なく、適水温あるいは酸素溶解度の生存条件に基づいた環境釣法である。

ズル曳きは特殊技能だ。 湖底の立木地帯や岩場、溶岩帯は危険な地雷原だが、それ以外は何とか曳きずってこられる筈だ。

ただし湖に何を奉納しても責任を取れないので、そこは隠密同心心得の条、「死して屍拾う者無し」でお願いする。

では釣運長久!


((ズル曳きは芦ノ湖や中禅寺湖の国道端では有効な釣法であるが、琵琶湖では菅浦湾で試したがノーヒットであった。ただし早春のシャローでの実釣性は確認していない。))